オイルの基礎知識

カブのオイル選びで本当に大事なことと、よく聞く誤解を短くまとめました。

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基油の種類

エンジンオイルは、ベースになる「基油」に、摩耗防止剤や清浄剤などの「添加剤」を混ぜて作られています。基油は大きく3つに分けられます。

種類作り方特徴
鉱物油原油を精製したもの安い。熱や酸化で性質が変わりやすく、劣化は比較的早い
部分合成油鉱物油に合成油を混ぜたもの価格と性能のバランス型。混ぜる割合は製品ごとにまちまち
全合成油化学的に作った・高度に処理した基油温度による粘度変化が小さく、熱や酸化に強い

「全合成」と書かれていても、中身は PAO(化学合成)、エステル、VHVI(鉱物油を高度に水素化処理したもの)などさまざまです。表記だけで性能は決まりません。

性能を決めるのは基油だけではありません。添加剤の配合と、規格を満たしているかどうかが同じくらい大切です。

鉱物油の誤解

よくある誤解

古いカブや空冷エンジンには、鉱物油のほうが合っている

実際は

年式にかかわらず、指定の規格と粘度を満たしていれば合成油で問題ありません。合成油は熱に強いので、油温が上がりやすい空冷エンジンにはむしろ向いています。

鉱物油が悪いわけでもありません。規格を満たした鉱物油を、こまめに交換するのも十分に良い選択です。

よくある誤解

合成油に替えるとオイルが漏れる

実際は

合成油がパッキンを傷めるわけではありません。もともと劣化していたパッキンのすき間を汚れがふさいでいた場合、洗浄力の高いオイルで汚れが落ちて、にじみが表に出ることがあります。原因はパッキンの劣化のほうです。

よくある誤解

合成油はサラサラなので、クラッチが滑る

実際は

クラッチの滑りに関係するのは基油の種類ではなく、摩擦を調整する添加剤です。バイク用の JASO MA / MA2 規格を満たしたオイルなら、合成油でも湿式クラッチは滑らないように作られています。

粘度の読み方

「10W-30」のような表記は、SAE(米国自動車技術者協会)の粘度規格です。数字はオイルの硬さの目安で、温度ではありません。

10W冷えているときの硬さ。W は Winter(冬)。数字が小さいほど低温でもサラサラで、始動直後にすぐ行き渡る
30温まったとき(100℃)の硬さ。数字が大きいほど、高温でも粘りを保つ

つまり 10W-30 は、「冷えているときは 10W 相当の柔らかさ、温まると 30 番相当の硬さ」という意味です。

粘度はどう決まる?

分子の大きさ

オイルは、炭素と水素でできた「炭化水素」の分子の集まりです。オイルの粒にあたるこの分子が大きい(炭素の鎖が長い)ほど、分子どうしが絡み合って動きにくくなり、ドロっとした硬いオイルになります。分子が小さいほど、サラサラの柔らかいオイルになります。

また、どんなオイルも温まると分子が活発に動くようになり、柔らかくなります。この変化の小ささを表す数値が「粘度指数」で、高いほど温度が変わっても粘度が安定しています。

ポリマーで高温時の粘度を保つ

10W-30 のように「冷えているときは柔らかく、温まっても粘りを保つ」オイルは、基油だけではなかなか作れません。そこで、粘度指数向上剤と呼ばれる長い鎖状の分子(ポリマー)を加えています。

冷えているとき:ポリマーは糸まりのように縮んでいて、オイルの流れをほとんど邪魔しない
温まったとき:ポリマーが広がって基油の分子と絡み合い、流れにくくなることで柔らかくなりすぎるのを抑える

基油の分子(短い鎖) ポリマー(長い鎖と枝) 丸は炭素の位置

全合成油はポリマーで粘度を作り込んでいる

全合成油の多くは、冷えているときにすぐ行き渡るよう、分子の小さい軽い基油を使っています。そのままでは温まったときに柔らかくなりすぎるので、高温側の粘りをポリマーで作り込んでいます。

0W-30 や 5W-40 のように、左右の数字の差が大きいオイルほど、ポリマーの役割は大きくなります。全合成油に幅の広い粘度の製品が多いのはこのためです。鉱物油のマルチグレードにもポリマーは使われますが、低温側をここまで柔らかくするのは難しく、10W-30 や 10W-40 が中心になります。

ポリマーの量や種類は製品ごとに違い、ラベルからは分かりません。

ポリマーは使ううちに切れる

ポリマーの長い鎖は、ギアのかみ合いなどで強い力を受けると少しずつ切れていきます(せん断)。切れると高温での粘りを保てなくなり、オイルは柔らかくなっていきます。ポリマーに頼る割合が大きいオイルほど、この影響を受けやすくなります。

カブはエンジンオイルで変速機のギアも潤滑しているので、四輪車よりポリマーが切れやすい環境です。決められた距離で交換することが、粘度を保ついちばんの方法です。

粘度の誤解

よくある誤解

硬い(数字の大きい)オイルほどエンジンを守る

実際は

硬すぎるオイルは、始動直後にエンジンのすみずみへ行き渡るのが遅れます。エンジンの摩耗は、冷えた状態で始動した直後に起きやすいといわれます。抵抗が増えるぶん燃費も悪くなり、油温が上がることもあります。

エンジンはメーカー指定の粘度を前提に、部品のすき間が設計されています。まずは指定粘度を守るのが基本です。

よくある誤解

柔らかい(低粘度の)オイルは油膜が切れやすい

実際は

今のオイルは、粘度だけでなく添加剤によっても金属どうしの接触を防いでいます。指定の範囲内の粘度であれば、低粘度だから危ないということはありません。

硬めにしてもよい場面

真夏の長距離や積載・登坂が多いとき、走行距離が多くオイルの減りやノイズが気になるときは、取扱説明書が認める範囲で一段硬め(例:10W-30 → 10W-40)にする選択はあります。

クラッチと規格

カブのエンジンは、クラッチがエンジンオイルに浸かった「湿式クラッチ」です。そのため、オイル選びでは粘度より先に規格を確認します。

JASO(日本のバイク用オイル規格)

MA / MA2:湿式クラッチ向け。クラッチが滑りにくいよう摩擦特性が調整されています。カブはこれを選びます。

MB:クラッチを持たないスクーター向け。摩擦を減らす添加剤が多く、カブに入れるとクラッチが滑る原因になります。

API(米国の規格)

SL、SN、SP のように、アルファベットが後ろに進むほど新しい規格です。ただし四輪向けの省燃費オイルには、湿式クラッチに合わない摩擦調整剤が入っていることがあります。車用のオイルをカブに流用するのは避けましょう。

まとめ

カブのオイル選びで大切な順に並べると、次のとおりです。

  • JASO MA / MA2 の二輪用オイルを選ぶ
  • 取扱説明書の指定粘度を守る
  • 決められた距離・期間で交換する。カブはオイルの量が少ないので、銘柄の違いより交換時期の影響が大きい
  • そのうえで、予算や乗り方に合わせて基油やブランドを選ぶ

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